「2022年度版」
名南がオススメする、歯科用の3Dプリンターの選び方
歯科用の3Dプリンターの選び方をご紹介します。
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歯科用に3Dプリンターを選ぶポイント
歯科技工所や院内ラボの皆様で、このように考えられている方はいませんか?
3Dプリンターを導入して、業務効率化を進めたいんだけど、
「様々な価格帯の3Dプリンターが出ていて、どれを買っていいかわからない」
「メーカーはいいことばかり言うが、どこを見て検討していいかわからない」
「そもそも3Dプリンターで何ができるの!?」
と悩まれていませんか?
その悩みは、今日このブログでお話する「5つのポイント」をおさえることでスッキリ解決できます。
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3Dプリンターは、「なんかこの機種が人気で売れているらしいから・・・」という理由で安易に買ってしまっては、購入後ホコリをかぶってしまうだけです。
あなたが3Dプリンター担当者であったなら、社長や院長に「せっかく買ってやったのに、なんで使わないんだ!?」と失望させてしまうかもしれません。
3Dプリンターはうまく使えば業務効率を大幅にあげてくれますが、機種選びを失敗するとまったく使えず部屋の隅に居座ってしまうという特性があるのです。
この記事では、歯科での利用目的で3Dプリンターを購入する際に見るべきポイントをお伝えします。最も重要なポイントで、5つのポイントに絞ってお伝えします。
この5つのポイントを抑えながら機種を選定していくことで、すぐに使える、毎日の業務に手放せない3Dプリンターが購入できるようになります。
自社に最適な3Dプリンターを導入して、うまく歯科技工業務に組み込めれば、業務時間削減、技工物の品質向上、若手へのノウハウ伝授、デジタルデータでの受注による顧客基盤拡大など、さまざまなメリットが享受できます。
この記事で3Dプリンター選定のポイントをマスターして、3Dプリンター導入を成功に導いてください。 -
ポイント①:造形方式を理解する
まずは造形方式を確認します。3Dプリンターと一口に言っても、現在様々な方式のものが発売されています。
ここでは、特に歯科業界でよく使われている方式についてご説明します。
光造形方式(DLP方式)
液体樹脂を紫外線を照射して硬化させながら造形していくタイプ。面で積層していくので、積層スピードが速く、精度も高い。デメリットとしては、造形面積を大きくしようとすると、その分解像度がさがる点。光源にプロジェクターとLCDを使用するかでも、コストや精度に違いが出てくる。最新機種では積層範囲と速度を両立する4Kプロジェクターを採用したものも市場にでている。
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光造形方式(SLA方式)
材料の液体状の樹脂(レジン)に点状の紫外線(UV)を当て、土台から少しずつ樹脂を固めて積み重ねる事でデータを出力する方法。紫外線は一筆書きの要領で当てていくため、積層面積は広く取れる。一方積層時間はDLP方式に比べて遅い。
インクジェット方式
粉末剤を噴射させながら積層をしていくタイプ。インクジェットで点で積層していくので、積層時間はかかるが、その分広い面積で積層ができる。
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FDM方式(材料押し出し方式)
フィラメントを熱で溶かして造形していくタイプ。インクジェット方式と同じく点で積層していくので、積層時間はかかるが、3Dプリンター自体の構造はシンプルなので、機種の価格は安く、材料費も安く済むことが多い。ただし、造形精度は他の2種類に劣る。
この中でも、歯科向けの3Dプリンターとしては、造形速度、造形精度のバランスの良さから、世界的にも光造形(DLP、SLA)方式が主流となりつつあります。
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ポイント②:造形精度を確認する
造形精度は、上記の積層方式にかなりの部分相関関係があります。造形精度と、3Dプリンターのコストは比例するといっても過言ではないため、自分が3Dプリンターを何に使用したいか、利用目的を明確にすることが非常に重要です。
例えば、保存していた矯正用の並行模型データを復元するために積層するだけなら、精度はある程度無視できるのでFDM方式などでも十分用途は果たせます。
一方、テックやデンチャーの樹脂を積層しようと考えると、高い積層精度に加え、樹脂をしっかりと硬化できる光源の強さなども求められるため、筆者なら比較的高額なDLP方式の3Dプリンターを推奨します。 -
ポイント③:使いたい材料が積層できるかを確認する
ここも、やはり使用用途を事前にしっかり決めておく必要があります。発売されている3Dプリンター用樹脂なら、なんでも手持ちの3Dプリンターで積層できるかというと、そうではありません。
3Dプリンター樹脂にも対応するタイプがあり、DLP用、SLA用などがあります。
3Dプリンター樹脂はメーカーがプリンターの光の波長にあわせて開発しているため、この波長があっていないと積層できないのです。
歯科用では主に、DLP用に385nm用、405nm用、またSLA用にはさらに別の波長用に樹脂をデザインしています。
3Dプリンターによっては、自社の樹脂しか対応していないものから、「オープンマテリアル」といって、サードパーティの樹脂の積層プログラムを公開しているメーカーもあります。このあたりも事前に調べておくことが、後々効いてきます。
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ポイント④:造形サイズを確認する
せっかくアライナー矯正を始めようと思っても、手持ちの3Dプリンターの積層サイズが小さくては実務的はありません。
3Dプリンターの中には、積層スピードと精度を優先するために、積層面積が非常にちいさい3Dプリンターもあります。ここでもやはり、何が積層したいのかを事前に決めておくことが重要です。
模型やデンチャーの積層まで予定しているなら、やはり積層面積の大きいものを導入するのが無難です。
SLA方式やインクジェット方式など、一筆書きのイメージで積層する3Dプリンターでは、積層面積が大きくなると積層スピードが遅くなりますので、このあたりのバランスも検討しておくことが重要です。
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ポイント⑤:積層スピードを確認する
購入してから失敗したとなげくユーザ様のほとんどが、「思ったより積層時間がかかってしまうので、使えない」というケースです。
SLA方式やインクジェット方式など一筆書きで積層する3Dプリンターは、積層の高さに加え、積層物の面積も積層スピードに関わってきます。
面積が大きいからと積層物をたくさん並べてしまうと積層時間がかかってしまいますので、このあたりの「実際の積層速度」もきちんと確認したいところです。
積層スピードを求めるなら、筆者はDLP方式を推奨します。面で積層しますので、クラウン一つでも、模型をびっしり並べても積層時間は殆ど変わりません。
このように、ひとくちに3Dプリンターを選ぶと言っても、様々な観点での比較検討が必要です。
①何を積層したいのか
②自社の製造工程のどこに3Dプリンターを利用するのか
③誰が、どの時間帯で使うのか
このあたりを具体的にイメージしながら検討していくと、必要な3Dプリンターが見えてくると思います。